真珠は古くから世界中の人々に珍重されてきました。
エジプトや古代ローマ、中国などでは紀元前から富や権力の象徴、また薬として用いられ、多くのエピソードが伝わっていますが、中でも古代ローマの博物学者大プリニウスの「博物誌」には、女王クレオパトラが古代ローマ帝国の将軍であったアントニウスに、「あなたがこれまでに見たことのない豪華な宴会を開いて見せる」という賭けを挑み、宴席で身に纏っていた真珠のイヤリングを片方外し、ワインビネガーに溶かして一気に飲み干したと記されています。世界最大と言われていたクレオパトラの真珠は、当時小国が買えるほどの価値があり、この賭けは誰が見てもクレオパトラの勝ちとなったそうです。
そして日本でも、縄文時代の遺跡から出土した「魏志倭人伝」や「古事記」、「万葉集」などにも記述がみられるように、真珠は昔から特別なものでしたが、近代になり世界に先駆けて養殖真珠の生産に成功し、戦後は国の重要な輸出品のひとつでした。現在では主要な養殖真珠の産地は海外へ移っていますが、いまでも国際的な真珠の取引には「匁」= monme という単位が使用されており、往時をしのばせています。