ジュエリーが一番輝いていた時代はいつか、と聞かれたら迷わず『ベル・エポック(良き時代)』のジュエリーと答えます。この時代は19世紀末から第一次世界大戦勃発(1914年)迄のパリが文化の中心地として繁栄した大変華やかな時代で、この直後にスペイン風邪が世界的に流行しました。
19世紀中頃から活発になった各国の万国博覧会が開催され、世界から美しいジュエリーも注目を浴びました。その大きなムーブメントは『アール・ヌーボー』スタイルと『ガーランド』スタイル。『アール・ヌーボー』スタイルは、ジャポニズムから端を発したルネ・ラリックのジュエリーを代表とする花や植物などの有機的なデザインで、『ガーランド』スタイルは、イギリスのヴィクトリアン後期~ジョージアン時代のプラチナを使った繊細な花綱模様を特徴としたスタイルです。
『ベル・エポック(良き時代)』は女性のエレガンスを象徴したデザインがもてはやされ、良き時代という名前の通り短い期間ではありましたが平和な時代が続きました。背景には素材であるダイヤモンドの供給とプラチナの精錬・加工技術の進歩があり、そして最後の手仕事の職人文化が残っていたということ、加えてそのジュエリーを買って使える階層と社交の場があったという奇跡的な出会いの瞬間だったと思います。
その後、第一次世界大戦の損害が大きかったヨーロッパから、アメリカ中心の世紀に変わり、社会は男性の戦死者が多く出たことによって女性の社会進出が進みました。短い間に有機的で曲線的なラインの『アール・ヌーボー』ジュエリーから、直線的で幾何学的なデザインの『アール・デコ』の時代(1910年代半ばから1930年代に流行)に変わります。それは直線的なデザインの方が大量生産し易く、女性が働く時のスタイルに合わせやすいデザインだったといえるかもしれません。
これらのアンティークジュエリーは全てウエダジュエラーのアーカイブのもので、約100年前の『アール・デコ』スタイルのジュエリーです。
『ジュエリーは時代を映す鏡』、その小さな宝石・デザイン・つくりの中から様々なメッセージを感じる事ができます。どの時代でも「美しいものは人を幸せに」し、平和であれば文化が育ち美しいジュエリーが生み出されます。
この不安な日々が過ぎ去った後には必ず次の『良き時代』が来る事を願いつつ、過去の歴史を紐解き、これからの時代の美しいジュエリーをつくっていきたいと思います。
ウエダジュエラー
代表取締役社長 植田友宏