Uyeda Jeweller
Column
和洋ジュエリー手帖
vol.19

花を活ける

 

植田 友宏 / Tomohiro Uyeda

コロナ禍の緊急事態宣言期間在宅時間が増え、花を活ける機会が増えました。

「宝石」は永遠の美、「花」は瞬間の美と相反する美を学ぶ事でジュエリーのデザインを極めたいと言う事もあり、花人・栗崎昇師匠の投げ入れの茶花を6年前から稽古つけて頂いておりました。栗崎先生がご逝去され、その後自己流で活けてましたが、やはり先生が必要と思い今年から川瀬敏郎先生のお弟子さんの林田英子先生に師事し、青山「花長」さん 3 階で茶花を学ばせて頂いております。

生徒のフラワーアーティスト竹田浩子さん・栗崎昇先生と

栗崎先生はどちからと言うと自由に楽しく活ける、と言うお考えでしたが林田先生はかなり厳しく、隙が無い指導をされます。

洋花と違って、和花、日本の美は「引き算の美学」であると感じます。例えばベルサイユ宮殿は隙間なく絵や装飾で埋め尽くされており、「足し算の美学」です。フレンチも中華も味を足していきますが和食は素材の旨味を最大限に活かす為の引き算の仕込みを重視します。また、日本の究極の贅沢は侘びさびの「茶室」ですから、無駄な要素を極限まで引いていき本質だけ残し、客人によって掛け軸や茶器、花器、花などを変えていく、ミニマムな変幻自在の空間、おもてなしをする事が日本の「引き算の美学」だと思います。

毎日「足し算」ですと飽きますし、エコではありません。これからの時代は益々「引き算」の美学が大事になってくるのでは無いでしょうか?私もジュエリーデザインに「引き算の美学」を常に意識して普遍的な美を追求しております。

私が活けた花

お客様との会話の中で日常に「花」や「ジュエリー」「アート」などの美が無いと元気が出ないと聞きます。美味しいと言う言葉も「美しい味」です。

コロナ禍の中で「美」が豊かな人生、そして免疫力を上げ、元気で健康な身体をつくることにとても重要な要素であると再認識致しました。その様な意味で全てを引いて侘びさびになってしまうのでは無く、僅かでも花やジュエリー・アートなどの遊びの「美」を生活に足していく事、楽しむ事が豊かな人生に繋がるのだと思います。