Uyeda Jeweller
Column
和洋ジュエリー手帖
vol.22

金「ゴールド」について

 

植田 友宏 / Tomohiro Uyeda

金が人類によって発見されたのは約 7,000 年前、メソポタミアに文明を築いた古代シュメール人と言われています。金の最もすぐれた特徴は加工がしやすく、長い年月を得ても腐食しにくく輝きが失われないことです。ゴールドの尊さは旧約聖書にもうたわれており、その価値は歴史的には貨幣としてより装飾美術品として高く評価されていました。

金が装飾品として使われたのはその永遠性や普遍性が人間を悪魔から守るとされ魔除けとして頭、喉、手首や耳など体の大切な部分に着けられたことから始まりました。

時代を経てネックレス、リング、イヤリング・ピアス、ブレスレットなどのゴールド・ジュエリーとなって人々の身を飾っています。ジュエリー以外に他の用途として投資用のコイン・地金、半導体、医療分野など様々な分野に活かされています。

和彫りの入ったロケットペンダント(昭和初期~中期)/ Japanese-style, engraved locket pendant (around 1930 - 1960)
和彫りの入ったロケットペンダント(昭和初期~中期)/ Japanese-style, engraved locket pendant (around 1930 - 1960)
3色の花びらと茎と葉の彫が繊細で美しい。ロマンティックなロケットペンダント。
目貫風帯留め(明治から昭和初期)/ A sash clip inspired by a sword hilt (Late 1800s - around 1930)
目貫風帯留め(明治から昭和初期)/ A sash clip inspired by a sword hilt (Late 1800s - around 1930)
白山子光長(1850 年~1923 年)作。蘭の目貫風帯留め。細密画に見られるような、細部に至るまでの緻密な植物描写と、小さく愛らしいものに愛情を注ぐ日本人らしさが生きた逸品。K18 ・赤銅(しゃくどう)。明治から昭和初期頃。ウエダジュエラー蔵

金は中国、オーストラリア、アメリカ、ロシア、南アフリカ、カナダなどの金鉱山から産出されていますが、1 トンの鉱石から採れる金は平均 3 ~ 5 gと僅かな量です。有史以来採掘された金の総量は約 18 万トンで、これは長さ 50 mのオリンピック・プールの約 4 杯分にあたります。残存推定量はその半分以下の約 5 万トンと言われています。日本において有名な鉱山と言えば江戸時代に開山した佐渡金山がありますが 1989 年 3 月に資源枯渇のため操業を休止し、現在は鹿児島にある菱刈鉱山でのみ産出がされています。菱刈鉱山は金含有量の高さを誇り、1 トンの鉱石に約 40 gの金が含まれる優秀な鉱山です。

金の純度(品位)を表すカラットは世界共通の単位でKの後に数字で表示されます。純金は K24、K18 は 24 分の 18 (75%) の金を含み、残りが銀や銅などの他の金属が含まれていることになります。イタリアを中心にしたヨーロッパなどの諸外国では 1,000 分率による品位表示も多く、K18 は 750 と表示されています。

また、銀や銅などを含めた合金にすることにより耐摩耗性や強度、硬度を高められデザインの多様化が可能になるため、ジュエリーでは K18 が多く使われています。 合金に使用する金属の種類や量によって色を変える特徴もあり、銅の比率を多くするとピンク・ゴールドに、パラジウムという金属を使用するとホワイト・ゴールドになり、カラーゴールドはジュエリーにも多く使用されています。

金の需要と供給

ドル建て金価格の変動は需要と供給の関係に加え、世界のさまざまな政治や経済状況にも影響を受けます。一般的にアメリカの景気が良い時には金が売られてドルが買われます。一方で、不況時や紛争、テロなどで地政学的リスクが高まった時にリスクの高い株式や金融商品が売られ、金へと資金が流れて金価格が値上がりする傾向があります。国内の金価格を考える際には、さらにドル円為替相場の変動を考慮する必要があります。

1973 年為替変動相場制移行、金価格にインパクトを与えた主な出来事とその年の平均金価格

1973年為替変動相場制移行、金価格にインパクトを与えた主な出来事とその年の平均金価格

金の最新価格と今後について

2000 年に 1,014 円/g(税抜き)まで下落した金価格は直近とうとう 7,000 円を超え 7,464 円(2022 年 3 月時点税抜き価格)となりました。今後の金の価格の推移を予想する事は為替を予想する事と同じ位難しい事ですがロシアのウクライナ侵攻により原油価格が高騰し、インフレ傾向が加速する事が予想されます。

1970 年代のオイルショックがもたらした世界的なインフレは金の買いを促進し、金価格を押し上げました。このため「金はインフレヘッジになる」との定説が生まれ「原油価格と金価格は比例する」と見られるようになっており、歴史を振り返ると上昇傾向は続くと考えられます。

金は宝飾品需要が約半数を占め、投資用の需要がそれに続きます。元々魔除けとして人類が御守り代わりに身に着け始めた金ですが、いざと言う時に換金出来る資産性にも注目が集まっています。今後の世界情勢を見ながら金の価格を注視してまいります。

金やダイヤモンド、ジュエリーについてお困りの事、ご質問等ございましたらお気軽にお尋ね下さい。

ウエダジュエラー
代表取締役社長
植田 友宏